
WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクトで必要な作業を階層的に分解し、構造化したものです。日本語では「作業分解構成図」「作業分解構造図」などと訳されます。WBSで作業を漏れなく洗い出してから、ガントチャートで日程に落とし込むのが一般的な流れです。本記事では、WBSの意味と目的、ガントチャートとの違い、作り方の手順と具体例を解説します。アジャイル開発でWBSを使う際の考え方とスケジュールの立て方も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
- WBS(Work Breakdown Structure)の意味・読み方と目的
- WBSとガントチャートの違い
- WBSの作り方の手順と具体例
- アジャイル開発でWBSを活用する方法
WBSとは?意味と読み方
WBSは「Work Breakdown Structure」の頭文字を取った略称で、「ダブリュービーエス」と読みます。日本語では「作業分解構成図」「作業分解構造図」などと訳されます。
プロジェクトマネジメントの国際団体であるPMI(Project Management Institute)は、WBSを「プロジェクトの目標を達成し、必要な成果物を作成するためにプロジェクトチームが実行する作業を、成果物を軸に階層的に分解したもの」と定義しています(出典:PMI)。
つまりWBSは、「何を作るか」「そのために何をするか」を大きな単位から小さな単位へ分解し、ツリー構造で整理した作業の全体像です。
※経済ニュース番組「ワールドビジネスサテライト」の略称もWBSですが(テレビ東京)、本記事ではプロジェクト管理におけるWBSを扱います。
WBSの構成:階層とワーク・パッケージ
WBSは、プロジェクト全体を最上位に置き、下の階層に行くほど作業が細かくなるツリー構造で表します。最下層の要素は「ワーク・パッケージ」と呼ばれ、実際に実行して進捗を追跡する作業の単位になります(出典:PMI)。
WBSの作成では、各ワーク・パッケージに担当者を割り当て、開始日と完了日を設定します。
WBSを作る目的
WBSを作成する主な目的は、作業項目・タスクの見落としや重複を防ぎ、プロジェクトの全体像を関係者全員で共有することです。WBSによりプロジェクトに必要な工数とリソースを精緻に見積もれると、適切なスケジュールを策定できます。
PMBOKにおけるWBSの位置づけ
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)ガイドは、PMIが発行するプロジェクトマネジメントの知識体系ガイドです。WBSの扱いは、版によって位置づけの説明が異なります。
- 第6版:統合、スコープ、スケジュール、コスト、品質、資源、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダーの10の知識エリアで構成されます。WBSの作成(Create WBS)は、スコープ・マネジメントのプロセスの1つとして扱われてきました(出典:ProjectManagement.com(PMI運営))。
- 第7版:プロセスベースから原理・原則ベースへ転換し、12の原理・原則と8つのパフォーマンス領域で構成されています(出典:PMI日本支部)。
- 第8版:2025年11月に発行されました。6つの原則と7つのパフォーマンス・ドメイン(ガバナンス、スコープ、スケジュール、財務、ステークホルダー、資源、リスク)で構成され、プロセスのガイダンスが再び盛り込まれています(出典:PMI)。
版による構成の違いはあるものの、プロジェクトの作業範囲(スコープ)を定義し、作業を構造化する手法としてWBSが使われる点は変わりません。PMI日本支部も、WBSの実務標準を翻訳・発行しています(出典:PMI日本支部「WBS実務標準 第3版」)。
WBSとガントチャートの違い
WBSは「やるべき作業」を分解した一覧で、ガントチャートは「いつ・どの順で作業するか」を表すスケジュール表です。ガントチャートは、各タスクの開始日、終了日、進捗状況を横棒で表します。
| 項目 | WBS | ガントチャート |
|---|---|---|
| 表すもの | プロジェクトに必要な作業の全体像 | 作業ごとの期間と進捗 |
| 形式 | 階層構造(ツリー・一覧表) | 横棒グラフ形式のスケジュール表 |
| 時間軸 | 持たない | 持つ |
| 答える問い | 何をするか | いつ・どの順でするか |
| 作成する順番 | 先に作る | WBSをもとに作る |
プロジェクト管理では、まずWBSで作業を細分化します。その後、各タスクをガントチャートに転記して時系列に配置し、全体のスケジュールを立案・可視化します。WBSとガントチャートはどちらか一方を選ぶものではなく、順番に組み合わせて使うものです。
WBSの2つの分け方
WBSには、成果物を軸に分解する方法と、プロセスを軸に分解する方法があります。それぞれの概要と、適している場面を解説します。
1.成果物を中心としたWBS
成果物(プロダクト)を軸としたWBSは、成果物の要件が明確なときに適しています。成果物から逆算して小さなタスクを洗い出し、各タスクの順序と着手するタイミングを決めていきます。
2.プロセスを中心としたWBS
プロセスを軸としたWBSは、成果物の要件が明確ではない状況で効果的です。要件定義・設計・開発・テストといった各段階での活動をタスクとして設定するため、成果物の要件が明確ではなくてもWBSを作成できます。
WBSの作り方:6つの手順
WBSは、以下の手順で作成します。
- 主要な作業項目を特定する
- 各作業項目を小さなタスクに細分化する
- タスクを構造化し、階層関係を明確にする
- タスクの抜けや重複をチェックし、必要に応じて追加・修正する
- タスクの優先順位と順序を決める
- 各タスクの工数や作業時間を見積もる
手順1〜3:作業項目を特定し、階層に分解する
まず、プロジェクトの成果物や工程を最上位の作業項目として書き出します。次に、各項目を「これ以上分けると管理が煩雑になる」程度まで細分化し、親子関係が分かるように階層化します。PMIは、作業が十分に詳細に定義されるまで、管理しやすい小さな要素に分解する手法として「分解(Decomposition)」を説明しています(出典:PMI)。
手順4:抜けと重複をチェックする(100%ルール)
WBSのチェックには「100%ルール」という考え方が使われます。WBSにはプロジェクトのスコープで定義された作業がすべて含まれ、子の階層の作業を合計すると親の作業の100%に等しくなるべきという原則です。また、スコープ外の作業はWBSに含めません(出典:PMI)。
手順5〜6:順序と工数を決める
最後に、タスクの優先順位と着手順を決め、工数を見積もります。ここで決めた順序と工数が、ガントチャートでスケジュールを組む際の材料になります。
適切にWBSを作成しないと、タスクの漏れや重複などが発生する可能性があります。また、初期段階で細分化が困難な部分については、プロジェクトの進行に伴って段階的に細分化しましょう。

WBSの具体例:Webシステム開発の場合
「社内向け勤怠管理Webシステムの開発」を例に、プロセスを軸にしたWBSのイメージを示します。実際の項目や粒度は、プロジェクトの規模や体制に合わせて調整してください。
| WBS番号 | 第1階層 | 第2階層 | 第3階層(ワーク・パッケージ) |
|---|---|---|---|
| 1 | 要件定義 | 1.1 業務要件の整理 | 1.1.1 現行の勤怠業務ヒアリング 1.1.2 業務フロー作成 |
| 1 | 要件定義 | 1.2 機能要件の定義 | 1.2.1 機能一覧作成 1.2.2 要件定義書作成・承認 |
| 2 | 設計 | 2.1 画面設計 | 2.1.1 画面遷移図作成 2.1.2 画面レイアウト作成 |
| 2 | 設計 | 2.2 データ設計 | 2.2.1 ER図作成 2.2.2 テーブル定義書作成 |
| 3 | 開発 | 3.1 打刻機能 | 3.1.1 打刻画面の実装 3.1.2 打刻APIの実装 |
| 3 | 開発 | 3.2 集計機能 | 3.2.1 月次集計処理の実装 3.2.2 CSV出力の実装 |
| 4 | テスト | 4.1 結合テスト | 4.1.1 テスト仕様書作成 4.1.2 テスト実施・不具合修正 |
| 5 | リリース | 5.1 本番移行 | 5.1.1 本番環境構築 5.1.2 利用者向けマニュアル作成 |
実務では、この一覧にワーク・パッケージごとの担当者、工数、開始日・完了日、依存関係(先行タスク)の列を加えます。担当者と日付を加えた一覧を時系列に並べたものが、ガントチャートになります。
WBSを作成するときの注意点
WBSは作って終わりではなく、関係者が使い続けられる状態にすることが重要です。作成時に押さえておきたい注意点を解説します。
プロジェクトリーダーの独断で作成しない
プロジェクトリーダーが、独断でWBSを作成してはいけません。1人でタスクを細分化すると、漏れが生じやすく遅延リスクが高まるためです。
また、工数や担当者を一方的に決定すると、チームメンバーの状況や感情を考慮できず、トラブルの原因となる可能性があります。プロジェクトの成功確率を高めるには、チーム全体で協力してWBSを作成しましょう。
タスク間の依存関係を明記する
WBSでは、タスク自体は認識できても、階層内のタスクの関係性が分かりにくい場合があります。「タスクAの後にタスクBを実行する」といった関係性が分かるように、タスク間の依存関係を図示または注意書きで明確化しておきましょう。
作成・更新の手間を減らす工夫をする
WBSの作成では、主要な作業項目の特定とタスクの細分化に時間がかかります。この過程を効率化するために、デジタルツールの活用を検討しましょう。デジタルツールを活用すると、階層構造を明確に表示でき、タスクの移動が容易になります。また、更新したデータをリアルタイムで関係者と共有できます。
WBSを活用するメリット
WBSを活用すると、リスクを軽減しつつプロジェクトを効率的に進められます。主なメリットを解説します。
タスクの抜け・重複がなくなる
WBSは階層構造で構成され、大きな作業項目を段階的に細分化します。細分化して階層化する過程でプロジェクト全体の構造を視覚化できるため、タスクの抜けや重複のリスクを低減できます。
役割分担・進捗管理しやすい
WBSによりタスクが明確になると、役割分担と進捗管理をスムーズに進められます。役割が明確になるメリットは、以下のとおりです。
- 責任範囲の明確化による、スケジュール遅延リスクの低減
- より精緻な工数見積もりによる、スケジュール管理の容易化
関係者とタスクやスケジュールを共有しやすい
情報共有にもWBSは役立ちます。WBSは客観性が高く、プロジェクト全体を構造化できるためです。WBSをもとにタスクやスケジュールについて説明すると、関係者は状況を素早く理解できます。
>>「アジャイルなのにWBSってアリ?」と思った方はこちらの資料も参考に
アジャイル開発でWBSは使える?
アジャイル開発では、WBSは不向きといわれる場合があります。一方で、使い方を工夫すれば、アジャイル開発でもWBSは全体像の把握や関係者との合意形成に役立ちます。
アジャイル開発でWBSが不向きといわれる理由
アジャイル開発は、イテレーションを繰り返しつつプロダクトの仕様を変化させていくため、開始時点で全体像を詳細に把握するのが難しい開発手法です。そのため、アジャイル開発の柔軟性が、詳細な計画を前提とするWBSと相反する場合があります。
たとえばスクラムの公式ガイドでは、プロダクトバックログを「プロダクトの改善に必要なものを、創発的かつ順序付けて並べた一覧」と定義しています。スプリントは1か月以内の固定期間で繰り返されます(出典:スクラムガイド2020)。最初にすべての作業を確定させるのではなく、優先順位に沿って計画を更新し続ける前提です。
アジャイル開発でWBSを使う際の考え方
アジャイル開発でWBSを使う場合は、最初からすべてを細かく分解しないことがポイントです。リリース単位や大きな機能単位など上位の階層で全体像を整理し、直近のイテレーションで扱う範囲だけを細かく分解します。初期段階で細分化が困難な部分は、プロジェクトの進行に伴って段階的に細分化しましょう。
また、WBSは関係者と作業範囲の合意を取るための資料として活用し、日々の作業管理はバックログで行うといった役割分担も考えられます。
併せて読みたい:アジャイル開発におけるドキュメント管理は重要?テンプレートもご紹介
アジャイル開発でガントチャートによって進捗管理するコツ
アジャイル開発においては、WBSに加えてガントチャートを併用し、スケジュール管理を行うケースがあります。WBSをもとにガントチャートを作成する際の、進捗管理のコツを解説します。
タスクの優先順位を明確にする
ガントチャートを作成する前に、予算や納期を考慮してタスクに優先順位をつけてください。ただし、アジャイル開発では優先順位の変更が前提となっています。計画には柔軟性を持たせ、定期的に見直して調整できるようにしておきましょう。
現実的なスケジュールを立てる
ガントチャートは、メンバーの実際の作業能力を反映した現実的なものでなくてはいけません。しかし、プロジェクト開始時点では、メンバーの作業スピードを正確に把握することは困難です。そのため、開発の進行に伴いメンバーのスキルと生産性を観察し、定期的にスケジュールを見直してください。
工数見積もりの精度を上げる
ガントチャートの活用に向け、以下の方法で工数見積もりの精度を向上させましょう。
- 時間ベースの見積もりではなく、ストーリーポイントによる見積もりにシフトする
- イテレーションごとに、工数の見積もりと実際の誤差を振り返る
ストーリーポイントによる見積もりは、タスクの複雑さや不確実性を反映しやすい方法です。
イテレーション終了時の振り返りを続けるうちに、見積もりの精度が徐々に向上します。バーンダウンチャートを作成しておくと、残作業量を容易に把握できるため、見積もりとの誤差を確認しやすくなるでしょう。
アジャイル開発でWBSをもとにスケジュールを立てる手順
WBSをもとに、リリーススケジュールとイテレーションスケジュールを立てる手順を解説します。
リリーススケジュールを立てる手順
リリーススケジュールは、プロジェクト全体のスケジュールです。リリーススケジュールを立てる手順は以下のとおりです。
- WBSをもとに、プロジェクト内のタスクに重要度を設定する
- 各タスクの作業時間を見積もる
- チームの作業効率(ベロシティ)を予測する
- プロジェクト完了までのイテレーション数を見積もる
- 実際のベロシティを計測する
- プロジェクト完了までのイテレーション数を更新する
実際のベロシティの計測は重要で、イテレーション数の更新により現実的なスケジュール管理が可能になります。

イテレーションスケジュールを立てる手順
イテレーションスケジュールは、1つのイテレーション内で実施する作業の計画です。イテレーションスケジュールを立てる手順は以下のとおりです。
- WBSで定義された作業項目やタスクを確認し、優先度の高いものを選定する
- 選定した作業項目やタスクを、さらに具体的なタスクに細分化する
- 各タスクの工数を見積もり、イテレーション内で完結可能か確認する
- イテレーションに余裕があれば、他の作業項目も追加して検討する
上記手順を通じて、チームは具体的な目標や作業の要点を明確にできます。

併せて読みたい:アジャイル開発におけるイテレーションとは?スプリントとの違いを解説
まとめ
WBSは、プロジェクトに必要な作業を階層的に分解し、全体像を可視化する手法です。WBSで「何をするか」を漏れなく洗い出し、ガントチャートで「いつ・どの順でするか」を決めると、現実的なスケジュールを立てやすくなります。
アジャイル開発でも、上位の階層で全体像を整理し、直近の作業だけを細かく分解するといった工夫で、WBSを活用できます。実践するにはチーム状況に合わせた柔軟な設計と、コミュニケーションが不可欠です。
Sun Asteriskでは、要件定義から進行設計、開発体制の構築まで、アジャイル開発を前提とした現実的な支援を行っています。
>>進め方に悩んだら、Sun Asteriskにお気軽にご相談ください
よくある質問
Q WBSとはどのようなものですか?
Q WBSは何の略で、どう読みますか?
Q WBSとガントチャートの違いは何ですか?
Q WBSを作成する具体的な手順を教えてください。
Q WBSの「100%ルール」とは何ですか?
Q WBSを作成する際、どのような点に注意すべきですか?
Q なぜアジャイル開発にWBSは不向きと言われることがあるのですか?
Q 工数見積もりの精度を上げるコツはありますか?
Q 開発にかかる具体的な費用や期間はどのくらいですか?
Q 開発体制の構築や進行設計について支援してもらえますか?

WBS(Work Breakdown Structure)について、基本の解説と、作成方法を具体的にご紹介いたしました。

開発プロジェクトを「計画倒れ」にしないために。目的・スコープ・体制・リスクなど、計画書で必ず押さえるべきポイントを体系的に整理しました。